エミュ開発を行う場合、基本的には実機を用意してROMを抜く必要がある事は、開発環境整備/ソフトウェア編で説明したとおりですが、実は一つだけ合法的な抜け道があります。それが互換ROMを使う方法です。有り難い事にPC-6001系ではBASICもフォントも互換ROMが公開されているので試してみました。まず BASIC ROM は下記で公開されています。

PC-6001用互換BASIC
上記ROMはLGPLライセンスなので、個人で楽しむだけが宜しいかと思います。だから組み込み公開なんかしちゃうとダメよん。どうしてもってんなら、組み込みじゃなくて同梱かな。この辺りは礼儀として作者の秋川藤志 @akikawa134 さんに連絡を取るように。繰り返しますが、個人的に楽しむだけなら全く問題ないです。

続いて、フォントROMです。これは以下の場所で公開されています。

PC-6001互換CGROM Ver.1.1

Retro PCの世界 / エミュレーター用自作フォント

最後にエミュレータですが、今回は定番の PC6001VW4 で試してみます。

Burnout - Develop - PC6001VW4


記事作成時の最新である pc6001vw400_20220219.zip をダウンロードしました。まず、エミュのアーカイブを展開します。サブフォルダにある rom というフォルダに上記でダウンロードした全てのフォント関連ファイルをコピーします。一部音声ファイルもあるみたいなのでまとめてコピーすると以下のような構成になります。
初期romフォルダ

PC6001VW4.exe をダブルクリックします。設定ダイアログが起動します。
機種選択
機種選択で PC-6001 を押して選択後、Start Emulation ボタンを押します。PC-6001 が一発で起動しました!
PC-6001
ですが、PC-6001mkⅡを選択して起動しようとすると…
ROM不足エラー
まだCGROM が足りないようです。不足ファイルは CGROM60.62 と CGROM60.66。ネットでは手に入りませんので、どうにかしてカタチを揃える必要があります。

まず、不足している CGROM60.62 は CGROM60m.62 をコピーしてリネームしました。CGROM60.66 は CGROM66.66 をコピーしてリネームしました。これで起動するかと思いきや…
漢字ROM不足エラー
今度は漢字ROMがないというエラーです。この漢字ROMは KANJIROM.62, KANJIROM.66 が必要となります。サイズは32KBなので、空のファイルを作ってしまいます。コマンドプロンプトを開いてカレントを rom フォルダに移動します。そして、下記のコマンドを実行します。

fsutil file createnew KANJIROM.62 32768
fsutil file createnew KANJIROM.66 32768
これでどうだと再度起動!すると…
PC-6001mk2
起動しました!なんかとってもユーモラスな画面表示ですが、とにもかくにも起動しました。起動してしまえばこちらのもんです(笑)。参考までに起動したときの romフォルダの内容です。
起動romフォルダ

さて、では折角なので、当時公開されていたゲームが動作するか、いくつか試してみます。まずは PC-6001 と言えば、AXシリーズから定番のオリオン
オリオン
PC-6001 AX-5 オリオン (C)1982 ASCII Publishing inc.

色はビデオ信号の滲みを利用していたのでRGBで表示したら白黒です。PC6001VW4で、上記キャプチャのように着色するには、色の滲みを再現するオプションを設定します。映像メニューのオプションからN60-SC4 色滲みの項目でモノクロ以外に設定します。
映像オプション
続いてボコスカウォーズです。あら、これも ASCII ですね…。
ボコスカウォーズ
ボコスカウォーズ (C)1985 ASCII CORPORATION

最後にアルバトロスというゴルフゲーム。ちなみに PC6001VW4 ではカセットテープロード中に [Ctrl]+[F10] を押すと 200%、もう一度 [Ctrl]+[F10] を押すとリミッター解除となりますので、テープロード時間を劇的に短縮する事が出来ます。
アルバトロス
アルバトロス (C)1986 日本テレネット

一番下の2行がゴミってますが、これ、どうやらソフト側が初期化していないようで💦

ということで、全て問題なく起動して遊べました。雑誌掲載のBASICプログラムだと多少問題が出るかもしれません。また、漢字がないので、それを利用したソフトは当然のように動作しないと思います。ただ、殆どのゲームはフォントは自前で持っていますし、ヘンテコなROMルーチンを利用しているソフトもないとは思います。問題はほぼ出ないでしょう。

参考までに上記で掲載したパッケージはこちら
パッケージ
さて、最後に PC-6001mkⅡSRを選択して起動しようとしたところ…
システムROM不足エラー
今度は SYSTEMROM1.64 が不足していると表示されました。不足 ROMは SYSTEMROM1.64, SYSTEMROM2.64, CGROM68.64 です。サイズは SYSTEM ROM が 64KB、CGROM が 16KB です。また fsutil で空のROMを作ってみましたが、流石に…
動かない
何も表示されませんでした。そりゃまあ SR 独自のメニュープログラムとかが SYSTEMROM に格納されているんですから、空のROMじゃ動きませんよねぇ。という事で、PC-6001, PC-6001mkⅡ, PC-6601 までは互換ROMで動かせたというお話でした。